それでも信じてみたいと言ったら、
君はバカだと笑うだろうか

「カザネさん、俺は誰も信じない。背中を守らせるつもりもないし、見捨てる事だってあるだろう。だから」
 ――カザネさんも、俺を信じるな。
 そう言った隊長の目はどこまでも真剣で澄んでいて。ああ、本当にそうなんだろうと思ってしまった。きっと私が死にかけていたり、邏守隊を裏切ったりしても、この人はあっさりと進んでいくのだろう。そう思える目だ。
 無言でいる私にそれ以上何も告げず隊長は背を向けた。私が告白してフられたような図に見えるじゃないかと、妙に冷静な頭の隅で思う。
 青い後ろ姿は一度も振り返らない。どんどん遠ざかるばかりだ。これからもずっとそうなのかな、と思ってしまう程に。
 隊長に近付いても本当の意味では近付けないと分かってしまったけど、なんとなく私はそこから目を逸らした。
 いつの間にか落ちていた視界を闇で覆いながら、隊長、と心の中で問いかける。

 それでも信じてみたいと言ったら、
貴方はバカだと笑うでしょうか。

 風に浚われた髪が、微かに刺さって痛かった。

独白10題「それでも信じてみたいと言ったら、君はバカだと笑うだろうか」

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