いちわ

 稽古が嫌で家出したら事故に遭いました。

「凄まじいですね」
 そう言って笑ったのは片目を赤い薔薇で隠した……男性? 女性でしょうか? とりあえず性別の分かりにくい綺麗なお方、ツカサさん。
「でも 星渡 ( ほしわたり ) になったことで怪我もしなかったみたいだし、稽古からも逃げられて一石二鳥なんじゃないかな?」
 カウンターの向かい側から笑って言ったのが(最初女性かと思ったが男性だった)若葉さん。
「その代わり、別世界に、来たわけだが……」
 雨笠あまがささんは無口で大柄な男性。対照的に見えるもう一人の男性、阿木あぎさんは退屈そうに椅子に座っている。
 この四人は元々こちらに住んでいる方達らしい。確かに雨笠さんの鱗や阿木さんの角がついている人は今まで見たことなかった。人間にしか見えないツカサさんも人間ではないらしい。若葉さんだけが人間らしい。
 それに対して私たち三人。そう、私だけではない。私の他にも二人ほど「ホシワタリ」とかいう地球の人間がいる。
 左目に傷を持つ紅時雨べにしぐれさんと、女装をしているという真希さん。何の偶然かこの場に集まった、接点が一つもない人たち。

 ……これから、どうなるんだろう。

 頭をよぎった不安に、思わず眉が下がった。

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