代わりになれない事は知ってる
赤嶺流は死んだ。十年前の話だ。
それから八年後、ワタシは生まれた。否、生み出されたが正しいだろうか。
人造人間、それがワタシを表す言葉だ。ワタシは夏が作り出した人造人間、それの二代目とでも言うべきだろう。
初代は赤嶺流を精巧に模していたらしい。外見だけでなく、内面も。しかし夏だけの知識では徐々に誤差が生じていき、お互いに苦しくなり、初代は破壊を望んだらしい。その後、その外装を再利用し、赤嶺流の情報を入力せずに生み出されたのがワタシだという。すべて夏から聞いたことだ。
夏は時折申し訳なさそうに笑う。
「どこまでも私の身勝手さに付き合わせてごめんね」
普段の会話と口調や一人称が変わるとき、それは夏の本心なのだろうと推察する。だからといってワタシに言えることは多くない。何故か。付き合わされていると感じていないからだ。
夏のしたことは許されないことなのかもしれない。夏自身裁かれることを望んでいるようでもある。それでもワタシは今のままでもいいと思うのだ。ただの『リュウ』として、夏の隣に居れるままで。
代わりになれない事は知っている。代わりになってはいけないと理解している。
だからこそワタシのままで、夏を笑わせられたらと思うのだ。
独白10題「代わりになれない事は知ってる」